鍼灸のこと

なぜ鍼灸は効果があるの?

鍼(はり)やお灸の刺激によって、元々身体に備わっている自然治癒力を高めます


身体には皮膚や筋肉などに刺激が加えられると自律神経の活動が変化し、自律神経が関係する臓器・器官の働きが反射的に調節される仕組みが備わっています。

鍼(はり)やお灸は、その仕組みを利用して、皮膚や筋肉に目には見えない微細な傷や小さな火傷を作り、自律神経に作用することで、傷害を負った部位の修復が促進され、血液循環が改善します。

その結果、血圧が調節されたり、ホルモンバランスが整えられたり、免疫系が活性化したりなど鎮痛効果だけでなく、全身に広範な効果が引き起こされます。そのため、鍼灸治療を続けていると体調が良くなり、病気になりにくくなります。

施術方法について

<鍼(はり)の施術>

ほとんど痛みのない鍼(はり)を使用します

とっても細いステンレス製の鍼(太さ約0.10mm~0.30mm)を、身体に刺入し、鍼先で皮膚を破ります。鍼施術は「痛い」というイメージがありますが、「管鍼法」による施術はほとんど痛みを感じさせません。管鍼法とは、鍼よりやや短くて、鍼管と呼ばれるストロー状の管に鍼を挿入し、わずかに出た鍼の柄の部分を軽く叩くことにより、鍼が深く刺さらないため、ほとんど痛みを感じさせません。
 
他にも、鍼を刺入せず専用の道具で皮膚を摩擦・接触・押圧するだけの施術法もあり、小児の夜尿症・夜泣き・疳虫・風邪予防などの治療には、おおよそこの方法を用います。
 
なお現在、鍼は使い捨てにしている鍼灸院がほとんどです。鍼灸院の開設には高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)の設置が義務付けられており、刺さない鍼やシャーレなどはすべて滅菌・消毒がなされており、安心・安全に努めています。

<お灸の施術>

お灸で経穴に熱刺激を加えることで、自律神経を整えます

灸とは、艾を用いて経穴に熱刺激を加える方法で、免疫活性に非常に効果のあることが証明されています。

このような皮膚上で艾を燃焼させる灸の施術法は、昔から日本で盛んに行われてきた方法で、秀吉をはじめとする戦国武将たちが健康のために日頃から灸をすえていたことや、松尾芭蕉が奥の細道で三里のツボに灸をすえながら旅をしたことはとても有名です。

鍼灸に効果的な症状

肩コリ、腰痛、頭痛、神経痛、関節痛など、鍼灸は多くのつらい症状に効果が期待できます。

鍼灸には鎮痛効果だけでなく、血液循環の改善や免疫細胞の活性化、内臓の働きを調節する自律神経を整え、身体の持つ恒常性維持機能を高める働きもあります。

鍼灸治療を受けているうちに、よく眠れるようになった、便通が良くなった、風邪を引きにくくなった、身体が軽い、体調が良い、食欲が出た、など体調の変化を実感され、痛み症状がなくなってからも病気の予防、健康維持・増進を目的に、定期的に鍼灸院に通ってらっしゃる患者さんがたくさんいらっしゃいます。

WHO(世界保健機構)では、次に掲げる疾患に鍼灸治療が適応であることを認めています

【神経系疾患】

神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー

 【運動器系疾患】

関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)

 【循環器系疾患】

心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ

 【呼吸器系疾患】

気管支炎・喘息・風邪および予防

 【消化器系疾患】

胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

 【代謝内分秘系疾患】

バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

 【生殖、泌尿器系疾患】

膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎

 【婦人科系疾患】

更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊

 【耳鼻咽喉科系疾患】

中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・扁桃炎

 【眼科系疾患】

眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

 【小児科疾患】

小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

鍼灸分野でもEBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づいた医療)の研究が進んでいます

近年、医療の分野ではEBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づいた医療)という新しい研究手法が取り入れられ、鍼灸の分野でもEBMの手法に則って研究が進められています。

その中には、様々な症状・疾患に対して、鍼治療※と西洋医学的治療の効果や有用性を比較した研究もあります。特にドイツと米国では、緊張性頭痛・片頭痛・膝関節痛・腰痛の4つの疾患について、莫大な公的資金を使った大規模な比較研究が行われました。

その結果、片頭痛の有効性だけは鍼治療と最新の西洋医学的治療がほぼ同等でしたが、その他3疾患の有効性と、片頭痛を含む4疾患すべての安全性、経済性は鍼治療の方が優れているという結果が報告されました。その報告があって以降、ドイツ・米国では鍼治療に保険が適応されるようになりました。